新入社員にとって、学生から社会人になるタイミングは環境の変化が大きくストレスを感じやすい時期です。
「昨日までは元気だったのに、突然会社に来なくなった・・・」
「昔に比べるとメンタル不調になる新入社員が増えたと感じる」
ストレスにうまく対処できず、メンタルヘルス不調に陥る新入社員は年々増加傾向にあります。そのため、人事担当者や管理職の方の中には、新入社員がメンタルヘルス不調にならずに定着し、活躍していく支援方法を検討している方が多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では新入社員のストレスや体調不良になる要因を紹介し、メンタルヘルス不調の予防方法を解説します。
この記事を読めば、企業や上司としての対象方法がわかり、新入社員の定着率アップや組織全体の健康経営の促進につながるでしょう。
■目次
1. 新入社員が体調不良になる原因
1-1. とりまく環境の変化
1-2. 生活リズムの変化
1-3. 人間関係がうまく築けない
2. 新入社員のストレス・体調不良のサイン
2-1. 元気がなくなり、落ち込みやすくなる
2-2. 遅刻や欠勤が増える
2-3. パフォーマンスが低下する
3. 新入社員のメンタルヘルス対策として企業が行うべきこと
3-1. 新入社員向けの研修の実施
3-2. 全社員向けハラスメント研修の実施
3-3. 年間健康管理計画を立案する
3-4. 産業医や産業保健師との面談の実施
3-5. 長時間労働の改善
3-6. メンター制度の導入
3-7. 気軽に利用できる相談窓口の設置
4. 新入社員のメンタル不調を予防するために上司が気を付けるべきこと
4-1. 叱責ではなく褒める、認める指導
4-2. 日頃からの密なコミュニケーション
5. まとめ
1. 新入社員が体調不良になる原因
新入社員が体調不良になってしまう原因には、主に次の3つがあります。
・とりまく環境の変化
・生活リズムの変化
・人間関係がうまく築けない
それぞれ詳細に解説していきます。
とりまく環境の変化
新卒で入社した新入社員にとって最初の1年間は学生生活から社会人への移行期間です。環境の変化が大きなストレス源となり、体調不良になりやすくなります。
実際、新しい職場環境には様々なストレス源があります。例えば、職場の空気、温度、騒音レベルなどの物理的な環境から、新しい仕事の責任や期待される成果などの精神的な環境まで、さまざまな変化に適応しなければなりません。
このような環境の変化はストレスを引き起こしやすく、免疫系に影響を与えるため、新入社員が体調を崩しやすくなる一因となります。
生活リズムの変化
新入社員が体調不良になる要因の一つには、生活リズムの変化があります。
学生時代とは異なり、会社で働き始めると朝早くからの勤務や定時までの長時間労働、さらには残業が加わることもしばしばです。場合によっては、シフト制勤務や夜間勤務など不規則な就業環境もあります。
このように生活リズムが変化することで、適切な睡眠時間が確保できなかったり、不規則な食生活になったりして体調を崩しやすくなります。また、休息やリラクゼーションの時間が減少し、ストレスが蓄積されやすくなるため、身体や精神の健康に悪影響を及ぼします。
生活リズムに慣れ、心身ともに環境に適応できるまでは注意が必要です。
人間関係がうまく築けない
新入社員が周囲との人間関係がうまく築けないために体調不良になるケースも少なくありません。
職場での新しい人間関係を築くことは、新入社員にとって大きなプレッシャーです。上司や同僚とのコミュニケーション、チームで協力して進める仕事など、人間関係をスムーズに構築できない場合に大きなストレスを感じやすくなります。
また、職場での対人関係が原因で精神的な疲労や不安を感じることは、睡眠障害や食欲不振など体調不良を引き起こす原因となり得ます。このように、人間関係のストレスは新入社員が体調を崩しやすくなる大きな要因の一つなのです。
2. 新入社員のストレス・体調不良のサイン
新入社員のストレスが高まっている状態や体調不良を示すサインには、主に次の3つが挙げられます。
・元気がなくなり、落ち込みやすくなる
・遅刻や欠勤が増える
・パフォーマンスが低下する
いずれの兆候も新入社員の様子をしっかり見ておくことでキャッチできるため、人事担当者や管理職は普段から気にかけておくことが重要です。
それぞれ詳細に解説していきます。
元気がなくなり、落ち込みやすくなる
新入社員が入社した際には元気だったにもかかわらず、最近元気がないと感じる場合は心理的ストレスが高い状態やうつ状態の兆候かもしれません。ストレスはやる気やエネルギーを奪い、仕事や日々の生活における意欲を低下させます。
また、ネガティブに考える傾向が強くなり気持ちが落ち込みやすくなっている場合にも、強いストレスがかかっているサインと考えましょう。いつもはポジティブに考えられることでも、高いストレス状態にいるとネガティブに捉える傾向が高くなります。
サインを見逃さないためにも、日頃からこまめなコミュニケーションを取って状態を把握しておくことが大切なポイントです。
遅刻や欠勤が増える
新入社員が何度も遅刻や欠勤を繰り返す場合、ストレスや体調不良のサインの可能性があります。
なぜなら、ストレスによって仕事へのモチベーションの低下、睡眠障害、情緒不安定などが引き起こされるためです。単なる怠慢ではなく、また、本人の意志とは関係なく出社することが難しくなっていることが考えられます。
遅刻や欠勤は、個人の問題だけでなく、職場全体の雰囲気や生産性にも影響を与えるため、早期に適切に対処する必要があります。
パフォーマンスが低下する
仕事のパフォーマンスが低下することもストレスや体調不良のサインの一つです。
「これまで小まめな報連相がなされていたのに、急に少なくなった」
「納期ギリギリの提出が増えた」
など、仕事を一緒にしている際に違和感があれば、メンタルヘルス不調の兆候かもしれません。
仕事の質や量が急激に低下する原因の一つには、ストレスや過労の可能性が考えられます。
特に新入社員は、適切に仕事をこなせなくなると自信を失い、さらにストレスが増大し、仕事ができなくなるという負のサイクルに入ってしまう傾向があります。
人事担当者や管理職の方は、日々の仕事の様子を観察し、少しでも異変を感じたら一人ひとりの状態を確認し、適切にサポートしていくことが大切です。
3. 新入社員のメンタルヘルス対策として企業が行うべきこと
新入社員が定着し、いきいきと働けるようにするためのメンタルヘルス対策として、企業が行うべき対策例は以下のとおりです。
・新入社員向けの研修の実施
・全社員向けハラスメント研修の実施
・年間健康管理計画を立案する
・産業医や産業保健師との面談の実施
・長時間労働の改善
・メンター制度の導入
・気軽に利用できる相談窓口の設置
それぞれ具体的に解説していきます。
新入社員向けの研修の実施
新入社員が適切にストレス解消や体調管理などができるようになる研修を実施しましょう。
ストレス解消法や体調管理、スケジュール管理などのスキルは個人差が大きいため、きちんとした知識や対処法を知っておくだけでも効果があります。
例えば、次のテーマの研修は新入社員のメンタルヘルス不調を減らす効果のある研修です。
・ストレスマネジメント研修
・メンタルヘルスケア研修
・コミュニケーション研修
・タイムマネジメント研修
・レジリエンス研修
人事担当者や管理職がサポートするだけではなく、新入社員の「自立」を促す意味でも重要な取り組みと言えます。
全社員向けハラスメント研修の実施
ハラスメントの問題は度々メディアでも話題になるほど頻発しており、新入社員がハラスメントを受けたと感じて退職するケースは少なくありません。何がハラスメントにあたるのかを理解し、お互いを尊重して気持ちの良い職場環境を作るためのハラスメント研修を全社員で受けるとよいでしょう。
ハラスメント事案が起こる理由の一つには、何がハラスメントに当たるのかに対する無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)があるためと考えられます。例えば、男女の感覚の差や、役職が上の者が人として優れているなどの偏った考え方です。
また、ハラスメントの問題は「上司から部下」の方向だけではなく、「部下から上司」にも起こっています。誰もがハラスメントの加害者になりかねないという意識のもと、企業として対策を講じていくことが重要になるのです。
年間健康管理計画を立案する
新入社員のメンタルヘルス不調を防止するために、年間の健康管理計画を立てましょう。年間健康管理計画では、法律で義務付けられている次の3つの内容を含める必要があります。
・定期健康診断の実施
・健康診断後の対応・措置
・ストレスチェック
定期的に新入社員の状態をチェックできる機会を作ることで、異変を察知しやすくなり早急な対処が可能になります。
産業医や産業保健師との面談の実施
新入社員のストレス状態が高く、欠勤や遅刻など、すでに仕事に支障をきたしている場合には産業医や産業保健師と連携し、面談機会を作ることも1つの方法です。一般的には新入社員本人が面談を希望したり、外部の医療機関を受診したりします。
いつでも新入社員が相談できるように体制づくりをしておきましょう。
長時間労働の改善
近年、長時間労働による過労死や過度なストレスは社会問題となっています。もし、長時間労働となっているとしたら、早急な改善に務めなければなりません。
なぜなら、長時間労働は法律で規制されており、労働基準法第32条で法定労働時間が定められているためです。法定労働時間とは、労働の時間は原則として1日8時間、1週間で40時間までと決められている労働時間のことです。法定労働時間を超えて働かせる場合は、労使協定の締結(いわゆる36協定)と割増賃金を支払うことが必要です。
メンター制度の導入
メンター制度とは、新入社員がいつでも相談をしやすいメンター社員を設置する取り組みです。一般的には、年齢が近い若手社員が担当したり、同じ部門より利害関係の少ない他部門の先輩社員が担当したりすることが多くあります。
直接上司に相談しづらい仕事の悩みや人間関係の悩みなどの解決をサポートできるメリットがあります。
気軽に利用できる相談窓口の設置
上司や人事担当者、メンターなどにも相談できないとなった場合に、相談窓口を設置することも効果的な取り組みの一つです。
相談窓口は会社内に設置するよりも、第三者機関を利用するほうがおすすめです。相談窓口を利用する従業員にとっては、第三者機関のほうが相談内容が漏れる心配が少なく、安心して利用しやすいためです。
4. 新入社員のメンタル不調を予防するために上司が気を付けるべきこと
新入社員を指導監督する責任を持つ上司の影響は大きいため、上司の振る舞いによって新入社員のメンタルヘルス不調を予防することが可能です。
上司は新入社員の普段の仕事ぶりを褒めたり、一人ひとりの個性を認め尊重する姿勢が大切です。日頃から気にかけ、積極的にコミュニケーションを取るようにすることで、お互いが気持ちよく働ける環境を作っていけます。
具体的なポイントを2つご紹介します。
叱責ではなく褒める、認める指導
新入社員のメンタルヘルス不調において、上司からの叱責、抑圧、否定などが直接的な原因になることがあります。なぜなら、いまの新入社員は幼少期から大人に叱責をされる経験が少なく、学校教育でも大声で叱責されることが少なくなっているためです。
上司からすると「精神的に弱い」と感じるかもしれませんが、怒られた本人たちはただ叱責されたという感情だけが残ってしまい、本来伝えたいことが伝わらなくなります。これからの時代に合わせて伝え方を変えていく必要があるのです。
新入社員の個性を認め、褒めて伸ばす指導力を身につけるために、管理職向けの研修は重要になるでしょう。
日頃からの密なコミュニケーション
新入社員のストレスになる大きな要因の一つは「職場の人間関係」であることがわかっています。例えば、新入社員がわからないと感じたことを気軽に聞けなかったり、邪魔だと思われているかもしれないと感じていたりすると、ストレスを感じやすい職場になります。
新入社員が安心して働ける環境を作るために、お互いの人間関係を強める密なコミュニケーションを心がけましょう。例えば、業務とは直接関係のない趣味の話しなど新入社員が興味を持っていることを中心とした雑談をするのも効果的です。
これにより心理的安全性を高め、各現場の管理職の方がコミュニケーションをしっかり取れる雰囲気を作っていくことがポイントになります。
5. まとめ
本記事では、新入社員のメンタルヘルスにおけるストレスや体調不良の原因と予防法について解説してきました。
新入社員は新しい職場環境の中で、生活リズムや人間関係などの変化によるストレスを感じやすくなっています。ストレスが溜まり、体調不良になると遅刻や欠勤が増えたり、仕事のパフォーマンスが低下するなどの兆候が現れます。人事担当者や管理職はサインを見逃さないように普段から気にかけ、適切にサポートしていくことが大切です。
会社として行うべきメンタルヘルスケアの施策としては、以下の対策が有効です。
・新入社員の自立を促す研修プログラムや全社員向けのハラスメント研修などの人材育成における対策
・定期的にストレスチェックするための年間健康管理計画の実施やメンター制度、第三者機関による窓口設置などの制度・体制面における対策
誰もが働きやすい環境を整えていくことで、従業員一人ひとりの健康的なメンタルヘルスを保つことが可能です。人事担当者や管理職の方々には、今回紹介した取り組みを積極的に活用し、健康経営の推進に生かしていただければ幸いです。
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