職場での欠勤や遅刻が目立ち始めたら、それはメンタルヘルス不調のサインかもしれません。

職場におけるメンタルヘルス不調は、従業員の健康と企業の生産性に深刻な影響を及ぼす可能性があります。また、不調を放置することは個人の身体的・精神的健康に悪影響を及ぼすだけでなく、企業にとってもリスクとなり得ます。

このような問題に早期に対処することは、従業員と企業の双方にとって重要です。

本記事では、メンタルヘルス不調者を出さないための予防策に焦点を当て、一次予防の重要性を解説します。手軽に実践できる予防策から職場環境の改善まで、職場全体のメンタルヘルスを向上させるための有益な情報を提供します。

一緒に、より良い職場作りを目指しましょう。

■目次

1. メンタルヘルス対策の重要性

厚生労働省の調査によると、メンタルヘルスの問題により長期休業や退職に至るケースが増えていることがわかりました。このような事態は企業にとっても深刻な問題となります。

なぜなら、従業員が休職や退職すれば、生産性の低下が避けられません。さらに、メンタルヘルス不調が原因で労災が発生した場合は、企業が損害賠償の責任を問われるリスクもあります。

特に、うつ病のような精神疾患は一度良くなっても再発しやすく、休職と復職を繰り返す可能性があります。こうした状況を防ぐためにも、企業はメンタルヘルス対策に取り組む必要があります。

適切なメンタルヘルス対策を実施することで、従業員の生産性の向上、労働災害の防止、企業の責任問題の回避などのメリットが期待できます。つまり、メンタルヘルス対策は個人だけの問題ではなく、企業の組織運営上でもリスク管理の観点から欠かせないのです。

参考元:厚生労働省「令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r04-46-50_gaikyo.pdf

2. 職場でメンタル不調になる原因

職場でメンタル不調者が頭をかかえる様子

職場でのメンタルヘルス不調は、さまざま原因によって引き起こされます。

主な原因は、「職場内の要因」「職場外の要因」「個人の要因」「周囲のサポート」の4つに分類されます。

1. 職場内の要因

業務の量や質、裁量の範囲の狭さ、将来性の不確かさ、人間関係のトラブルなどが挙げられます。これらは従業員のストレスレベルを直接的に高め、メンタルヘルスの不調につながりやすいとされています。

2. 職場外の要因

家庭での育児や介護の責任、死別や離婚などの辛い出来事があると、そのストレスが職場にも影響を与える可能性があります。

3. 個人の要因

年齢、性別、性格、自尊心などが含まれ、これらはストレスへの耐性に影響を与えます。

4. 周囲のサポート

仕事や家庭でのサポートが不足していると、ストレスが慢性化し、メンタルヘルス不調を悪化させることがあります。信頼できる上司や同僚、家族などからのサポートは、ストレスを緩和し回復を促す重要な要素です。

このように様々な要因が重なり合うと、メンタルヘルス不調につながってしまうのです。企業は従業員一人ひとりの特性や置かれた環境を考慮し、快適で働きやすい職場作りに取り組む必要があります。

3. メンタルヘルス対策の3つの段階

メンタルヘルス対策は、従業員の心の健康を守り、生産性の向上を図るために、厚生労働省が提唱する「一次予防」「二次予防」「三次予防」の3つの段階に分けて実施されます。

一次予防【未然防止】

一次予防は、メンタルヘルスの問題を未然に防ぐための取り組みです。

これには、定期的なストレスチェックやストレス管理のための研修、そして職場の環境を改善する取り組みが含まれます。

主な目的は、メンタルヘルス不調の原因に先手を打つことです。

二次予防【早期発見、適切な措置】

不調の兆候を見逃さずに早期発見し、適切な措置を講じることが目的です。

相談窓口の設置や産業医による面接指導が中心となり、早期介入によって症状の悪化を防ぎます。

三次予防【職場復帰の支援】

休職した従業員が職場に復帰する際の支援を指します。

産業医をはじめとする専門家が本人と上司に対して助言を行い、復職プログラムを提供することでスムーズな職場復帰を促します。

メンタルヘルス対策の概要について詳細はこちらをご覧ください:
 職場のメンタルヘルス対策とは?具体的な実践方法と運動効果

 

過去に休職経験のある従業員は、欠勤日数が増える傾向にあるため、特に「一次予防」の段階での対策を積極的に活用することが最も重要とされています。

従業員一人ひとりの特性を考慮しながら、職場環境の改善やストレス管理教育などの施策を効果的に活用することで、メンタルヘルス不調のリスクを大幅に軽減できるからです。

以下では、「一次予防」についての具体的な対策について解説していきます。

4. メンタルヘルス対策の一次予防として企業ができる対策

職場でのメンタルヘルス研修に従業員が参加する様子

メンタルヘルス不調を未然に防ぐために企業が一次予防として講じることができる対策は、従業員や管理職がメンタルヘルスの問題に効果的に対応できるようサポートすることです。

以下のような取り組みを通じて、職場のメンタルヘルス状態の全体的な向上を目指し、従業員が心身ともに健康で働き続けられる職場環境の構築を目指しましょう。

4-1. 従業員へのサポート(セルフケア)

従業員が、メンタルヘルスの不調を未然に防ぐためのセルフケアをサポートします。

1.ストレスチェック

ストレスチェックは、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐための重要な取り組みです。2015年12月から義務化されたストレスチェック制度では、従業員は自身のストレスレベルを客観的に把握し、必要に応じて早期に対応できます。

業務上の心理的負担や心身の自覚症状、周囲のサポート状況などを評価し、従業員が自身のメンタルヘルス状態に気づき、セルフケアや適切な対処を促すことが目的です。

高ストレスの従業員には、さらなる面談やサポートを提供し、職場内のストレス源を特定し対策を講じます。

2.ハラスメント窓口の設置や外部カウンセラーとの連携

ハラスメント対策の窓口や外部カウンセラーと連携することは、従業員が直面するさまざまな問題やストレスに対処する上で重要です。匿名で相談できるようにすることにより、従業員は安心して自分の悩みを打ち明けやすくなります。

このような環境を整えることで、職場の人間関係や業務の悩み、ハラスメントなど多岐にわたる問題に専門のカウンセラーからのアドバイスを受けることが可能です。

この支援は従業員のストレスを減らし、メンタルヘルス不調の問題を早期に解決するのに役立ちます。そのため、企業には従業員のプライバシーを守りつつ、適切な支援を提供する責任があります。

3.メンタルヘルス/マインドフルネス研修

メンタルヘルス研修やマインドフルネス研修は、従業員がストレスに対処し、精神的な健康を維持するための技術を身につけるために重要です。

メンタルヘルス研修では、ストレスの認識と管理、コミュニケーションスキルの向上、ワークライフバランスの重要性について学びます。

マインドフルネス研修では、瞑想や深呼吸などを通じて、心を落ち着け、集中力を高める方法を学びます。

4-2. 管理職へのサポート(ラインケア)

管理職は、部下のメンタルヘルスを守る上で重要な役割を持っています。この役割を果たすために、管理監督者研修を定期的に実施し、従業員のストレス状態や健康に対する意識を高めることが一次予防において必要です。

研修では業務量の調整や勤務シフトの見直し、有給休暇の取得促進、産業医との面談など、従業員のストレス軽減に向けた具体的な対処方法を学びます。

また、ストレスチェックの結果を集団分析し、部署ごとのストレス状況を理解することで、部下への個別のフォローアップが可能になります。「いつもと違う」行動や健康状態の変化に気づいた際には、積極的に声をかけ、適切なケアを行うことが管理職の責務です。

このような継続的なラインケアを通じて、職場のメンタルヘルスを守り、従業員の健康と生産性の向上に繋げましょう。

4-3. 職場環境の改善

ストレスチェックの集団分析を利用することによって、企業は部署やチームごとに特有のストレス要因を明確にし、それに基づいた具体的な対策を立てることが可能になります。

例えば、「業務の量」がストレスの主な原因として特定された場合、再配分やプロセスの効率化を進めることが対策として考えられます。

さらに、テレワークやフレックスタイム制度の導入により、従業員は業務とプライベートの間でより良いバランスを見つけやすくなるでしょう。

また、職場の物理的環境が、従業員のストレスレベルに与える影響も無視できません。騒音や照明、温度などの環境要素を改善することで、従業員の作業環境の快適性を向上させます。静かな作業スペースを設けたり、目に優しい照明を使用したり、適切な温度に保つことでストレスの少ない労働環境を実現できるでしょう。

職場環境の改善策を実施することで、従業員はストレスが少なく、元気に働ける環境が手に入ります。この変化は、個々の満足度を高めると同時に、職場全体の生産性向上にもつながるでしょう。

こうした取り組みを通じて、メンタルヘルス不調のリスクを減らし、健康で活き活きと働ける職場づくりを目指します。従業員一人ひとりと企業の双方にメリットがあるよう、着実に対策を実行していくことが重要です。

5 . まとめ

本記事では、職場におけるメンタルヘルス不調の一次予防の重要性とその具体的な対策について詳しく紹介しました。

一次予防は、メンタルヘルスの問題が発生する前に予防措置を講じることが目的です。この初期段階での介入によって、従業員のメンタルヘルスの不調を防ぎ、同時に職場の生産性を高め、働きやすい環境の維持が可能となります。具体的には、ストレス管理の教育や職場のコミュニケーション改善、ワークライフバランスの促進などが含まれます。

適切なメンタルヘルスケアを実施することで、従業員一人一人が精神的健康を保ち、より充実した職業生活を送るための支援が可能です。職場でのメンタルヘルス不調者を出さないために、これらの予防策を積極的に取り入れ、健康経営の推進に努めましょう。

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